1. 47000人の会員が連携することができる仕組みをつくる
2. 会員の所得を向上させる
3. 現在日弁連の課題となっている立法分野で成果を得る
4. 民事分野・刑事分野での適切な対応を行う
5. 人権課題へ取り組む
6. 国際問題へ対応する
7. 性の格差をなくす
8. 多様な弁護士の活躍を支援する
9. 災害に適切に対応する
10. 新たな司法改革へ取り組む―法曹養成制度の改革

1. 47000人の会員が連携することができる仕組みをつくる
①52単位会を訪問し意見を聞く
会長権限を持った後、52単位会のすべてを回り、会員から意見を聞き、それを会務に活かしていきます。
②日弁連の組織改革
日弁連はもっと地方の意見を反映する組織となるべきです。具体的には総次長室の改革(地方からの採用の拡充)、意見照会の見直し(理事会の意思決定能力の強化)、日弁連・弁連・単位会の役割の見直しが挙げられます。
③会員の財政的負担の平準化
各単位会の会費の平準化を図り、全国の会員が同程度の会費負担をする仕組みを作るべきです。そのために小規模単位会への助成を見直します。
④綱紀・懲戒制度の拡充と迅速化(負担の軽減を含む)および市民窓口の充実
綱紀・懲戒制度は弁護士自治の根幹ですが、その負担も重くなっています。各委員会委員の有償化を実現し、濫用的な大量懲戒請求の簡易却下手続や懲戒申立ての有償化の議論を再度行うべきです。綱紀・懲戒となる前のセーフティネットとして会員のメンタルヘルス問題に取り組み、会員サポートの充実を図ります。
また、市民からの意見の窓口となっている市民窓口制度の充実を図って、綱紀・懲戒の申立て件数を少なくする方途も検討します。
⑤会員が全国的に適正に再配置される仕組み作り
地方創生の取組は、私の施策の根幹です。いわゆる、新規弁護士登録の増加、弁護士経験を持った会員の地方会への登録変更の増加を促進し、会員が全国的に適正に再配置される仕組みを作ります。
⑥過疎地域での弁護士の司法アクセス活動の支援
我が国の人口減少・過疎化は急激に広まっており、その中でも司法アクセスの保障は不可欠です。オンライン接見の実現、法テラス・ひまわり公設・単位会の公設事務所の強化、法テラス報酬の増額は必要な施策です。
⑦弁護士国民健康保険の全国化への取組
弁護士の国民健康保険は、東京都・千葉県・神奈川県・埼玉県しかカバーしていません。是非、東京都弁護士国保組合と協力して全国の支部化を実現し、全国の会員が組合員となれる仕組みを作りたいと考えています。
2.会員の所得を向上させる
①法テラスの報酬・手続問題への取組
会員の安定的な所得向上のためには、法テラスの報酬を引き上げる継続的な努力が必要です。裁判所歳出予算は国家予算の0.3%内外です。民事扶助に関する法務省予算も十分とはいえません。その規模を拡大する努力をしていきます。また、そうした予算と共に公益的な活動に対する基金からの支出を含めて加算していくことも必要です。さらに、手続の煩雑さも課題です。法テラスと交渉して、できる限り申請手続を簡素化することが求められます。
②LACの充実
弁護士費用保険(LAC)は、報酬額の新基準が制定されたこともあり、会員の収益の向上に貢献しています。他方で、まだ労力に見合わない案件があること、保険会社の応対が良くない場合があること等から名簿登録者が減少している単位会もあるということです。こうした問題を解決してLACのさらなる利用を推進します。
③研修制度を通じた取扱い分野の技能向上
AIやIT分野を含めて、多くの法律業務が専門化していること、弁護士倫理研修など会員が学ぶべき項目があることから、日弁連・弁連、単位会や日弁連法務研究財団等の研修を充実させて、会員の取扱い分野の技能の向上を推進します。
④司法書士法改正(家事代理権問題)への反対
家事代理権を司法書士にも付与することを求める案が、司法書士会から提案され、これに議連ができて法律案も作成されたとのことです。しかし、紛争事案だけでなく、非紛争事案を含めて、家事事件の代理は弁護士が担うことが適当だと考えます。加えて、弁護士の担い手不足が問題とならないように、次項の対応を含めて、弁護士の負担減、収益増を図る必要があります。
⑤家事に力を入れている会員と行政及び関連他業種とのネットワーク化
家事事件に適切に対応するためには他の業種との連携が不可欠です。自治体、ソーシャルワーカー、他の士業と連携して効果的に家事問題(特に、高齢者問題)に対応する必要があります。弁護士の負担減と効果的なネットワークの構築を達成します。
⑥不祥事などの企業案件の獲得を通じた刑事分野の所得向上
刑事分野の担い手不足も喫緊の課題です。裁判員裁判や否認事件等、知識と労力を必要とする案件が増えていることもありますが、法テラスの報酬問題や接見の負担の問題もあり、これらの課題を解決していきます。また、スタッフ弁護士とそれ以外のジュディケアを担う弁護士の連携を図る必要があります。さらに、刑事事件でも収益性の高いホワイトカラークライムなどの事件を、広く会員が担当できるようにすることも必要です。
⑦AIなど先端分野への対応
最近の法律分野はAI等の先端分野に及び、ますます知識と経験を積む必要があると同時に、収益性の高い案件も増加しています。こうした分野の研修を拡大して会員が対応できるようにし、収益を増やす意識的な取組が必要です。また、AI等の先端技術を安全に会員に提供し、ガイドラインで利用方法を示すことも日弁連の責務だと考えます。
⑧地域貢献への対応―行政連携を含む
弁護士及び単位会には、所在する自治体との連携がさらに求められます。その際に、自治体から適切な報酬の支払いがなければなりません。この二つの問題を解決することが必要です。
⑨事務所経営への助言
弁護士は高い知識と経験を積んで人格を陶冶することが必要とされ、その上で事務所経営を安定させなければなりません。事務所の場所、雇用、ITを含めたデジタル対応、備品の購入まで細やかな事務所経営への助言をすることで、会員の最終的な収入を上げていけるよう努めます。
3.現在日弁連の課題となっている立法分野で成果を得る
①現在日弁連の課題となっている立法分野は多岐にわたります。②から⑤は、日弁連弁護士政治連盟で議論されている項目ですが、日弁連が取り組むべき立法分野はこれに限られません。
②再審制度・えん罪への対応
約75年にわたり刑事訴訟法の再審部分は改正されていません。検察手持ち証拠の全面開示、再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止等、これまでの議論を踏まえて再審法が新設されるよう取り組みます。二度と袴田事件のようなことを起こしてはなりません。
③選択的夫婦別姓制
日弁連は、選択的夫婦別姓制の導入について、これまでもかなりの努力をしてきました。多くの立法府議員や経済界も賛成していますし、国連からも意見書が送付されています。子どもの姓の問題を解決して、選択的夫婦別姓制を実現しなければなりません。
④死刑廃止・犯罪被害者対応
私は死刑廃止を全面的に支持します。憲法36条の「残虐な刑罰」となるおそれがあること、袴田事件のようなえん罪事件に取り返しのつかない結果をもたらすべきでないこと、国際社会では潮流となっており我が国も死刑廃止条約に署名していること(批准はしていない)からして、死刑の執行を5年程度停止したのち、犯罪率の検証を行った上で死刑を廃止する必要があります。
他方で、SNS等による誹謗中傷問題への対応等、犯罪被害者やそのご家族に寄り添った対策が不可欠です。日弁連では公費による犯罪被害者等支援弁護士制度を支持し、滋賀県での人権擁護大会において損害賠償制度を拡充すべきとする宣言をしていますが、私もこれらに全面的に賛成です。
⑤いわゆる谷間世代の問題の解決
新65期から70期までの貸与制世代(いわゆる谷間世代)と呼ばれる会員は約1万人にも及び、それ以降も以前の給費制の額よりも低額の給付制が続いています。この問題は会員間の不公平感を呼びます。約4分の1の法曹が抱える不安定さを解決することが、弁護士の一体化とそれに支えられた弁護士自治にとって不可欠です。
4.民事分野・刑事分野での適切な対応を行う
①民事分野での対応
(1)2026年5月から、弁護士は民事裁判における書類のオンライン提出が義務化されます。これにすべての会員が対応できるように、会内サポート体制を構築して日弁連・単位会を挙げて取り組む必要があります。
(2)また、実態解明のために、証拠の全面開示と、弁護士と依頼者の通信秘密のように開示すべきではない情報との選別を明確にして、証拠へのアクセスを充実させるべきです。
(3)加えて、裁判外での紛争解決制度(ADR)を充実させると同時にオンラインでの実施(ODR)も各課題を克服し実現させなければなりません。
(4)さらに、日弁連と日弁連法務研究財団が取り組んでいる民事判決書の全面オープンデータ化の取組みも推進します。
②刑事分野での対応
(1)今でも行われている密室での取調べの可視化を推進し、取調べの録音・録画の全件・全過程への拡大、取調べへの弁護人の立会い、保釈制度の拡大等を引き続き強力に求めていきます。
(2)また、ファクシミリ利用による準抗告申立てやオンライン接見制度を早急に実現して、刑事弁護が効率的かつ効果的になされる仕組み作りをしていきます。これにより刑事弁護の担い手不足という問題を少しでも解消すべきです。
(3)さらに、罪に問われた障がい者等に対して、刑事施設収容中やその後の弁護士によるきめ細かい対応が求められます。
(4)刑事手続のIT化の取組が進んでいます。被疑者・被告人のプライバシーに配慮して、情報セキュリティを強化することにも並行して取り組む必要があります。
5.人権課題へ取り組む
①政府から独立した人権委員会の設置
日本では名古屋出入国在留管理局で収容中だったスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった件や旧ジャニーズ事務所の創業者による性加害問題なども海外から批判されています。早期に政府から独立した人権委員会を設置し、国内の人権問題に取り組むことにより、日本が世界に誇れる国として認められることは間違いありません。
②環境問題への対応
日弁連としては、気候変動の問題を人権侵害の中心の一つに据えて考えるべきです。カーボンニュートラルの課題のような気候変動に対する運動を強化し、他方で災害対策に迅速かつ適切に対応するため、災害ケースマネジメントなど具体的な政策を施さなければならないと考えます。
③憲法9条問題への対応
平和的生存権は、憲法前文2項に明記されています。一度戦争状態となると、生命や身体の安全を含む国民の人権に甚大な侵害が生じ、それを容易に止めることはできません。戦争は、絶対に起こしてはなりません。憲法9条をめぐる自衛隊の問題、安全保障の問題だけでなく、緊急事態条項の問題やその他の憲法改正の問題にもそのような視点で取り組む強い決意が必要です。
④入管と外国人の人権問題
改正入管法が2023年に成立し、監理措置制度の創設、3回目以降の難民申請後の強制送還の可能性や刑罰を伴う退去命令など、入管行政における外国人の人権侵害のおそれが高まっています。我が国は、「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」(憲法前文)という意思を表明している以上、我が国の利害だけで外国人の人権を捉えるのではなく、外国人の方々にも適切な人権保障の制度を提供することが求められます。
⑤子どもの人権
1994年に、日本政府は、子どもの権利条約を批准していますが、国連の子どもの権利委員会からの指摘に十分に対応していません。2022年に制定されたこども基本法とこども家庭庁設置法の課題に対応し、子ども手続代理人の報酬が、国費化によって賄われるよう力を尽くします。
⑥霊感商法と宗教問題
宗教活動は憲法上保護されていますが、それを隠れ蓑にした霊感商法のような悪質な消費者事件も生じています。日弁連では、さらなる被害者がでないような対応を継続する必要があります。
⑦依頼者と弁護士の通信秘密の保障
依頼者と弁護士の通信の秘密は、法の支配の一部であり、国連決議で設けられた「弁護士の役割に関する基本原則」でも規定されています。引き続き依頼者と弁護士の通信の秘密保護制度を確保する努力を続けます。
⑧SNS問題
SNSは、迅速な情報の提供を受けるために、既存のメディアを超えて有用ですが、他方で、フェイクニュースや誹謗中傷を早急に除去し、生じさせない方法をとる必要があります。
6.国際問題へ対応する
①国際問題への積極的取組―ICCへの支援を含む
1990年第8回国連犯罪防止刑事司法会議で採択された国連「弁護士の役割に関する基本原則」に従い、我が国の弁護士の力を、国外で基本的人権を侵害されている人々へも差し向ける必要があります。これには国際政治の渦中にいる国際刑事裁判所(ICC)への支援を含みます。
②外国人労働者の権利保護
外国人労働者は、日本人の労働者より劣悪な労働環境に置かれています。また、来日する際に代理人への多額の支払いや借財を余儀なくされている方々も多い状況です。この問題を是正するために法制度の改善が必要です。昨今、「ビジネスと人権」が取りざたされていますが、日弁連も、中小企業やサプライチェーンの末端まで外国人労働者の人権が守られるよう、これまで以上に努力していくことが求められています。
③他国弁護士会への協力
私たち弁護士にも、我が国の憲法的価値を維持するために、他国と協力することが求められています。国際社会で他国の弁護士会と協力していきます。
7.性の格差をなくす
①女性弁護士の拡大
女性弁護士の登録数を増やすには、弁護士収入増と職場の確保が必要であると考えます。女性については、特に職場の確保が課題ともいえます。法律事務所だけではなく中央官庁や自治体の任期付き公務員や企業内の弁護士としても雇用の機会を増やせるように、宣伝することが大切だと思います。各地で開催されている「女性法曹になろう」といったイベントも支援していくべきです。
②ダイバーシティ&インクルージョンの拡大
女性弁護士比率が2割程度と低いことに加え、女性は家庭内の法律問題に向いているという偏見もあり、大手の事務所でのパートナー率も低く、その結果女性弁護士の所得が男性に比べて低いことが問題です。女性弁護士のガラスの天井(グラスシーリング)を破ることを強力に支援し、LGBTQ+の方々等、性を超えた法曹のあり方を考えるべきです。
8.多様な弁護士の活躍を支援する
①組織内弁護士との連携
企業で活躍している会員は優に3000人を超えており、「社会の隅々に司法の目を」という考え方は定着してきているように思います。日弁連としては、それらの会員を応援し、さらに企業のガバナンスを強化する取組を推進していきます。
②中央官庁や自治体の弁護士採用の増加
中央官庁や自治体に弁護士が採用されてきましたが、まだ人数が十分とはいえず、採用に伴い弁護士登録を抹消する事例も多く、課題です。今後さらにそうした行政との連携が求められるところであり、弁護士としての採用も増加することが必要です。
③法務を超えた弁護士の活躍支援
弁護士が法務を超えて、市民やビジネスの世界で幅広く活躍することが求められています。日弁連としてその活動を支援していくことが必要です。
9.災害に適切に対応する
毎年、自然災害が起きており、その度に日弁連も災害復興支援委員会を中心に単位会と連携して活動をしてきました。その努力には、①行政との連携(各種被災者支援チェックリストに基づく連携等)、②司法的解決方法(無料法律相談の実施、被災者生活再建ノートの普及、災害時の弁護士会の活動マニュアルの作成と利用促進、自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインの作成と普及等)、③立法措置の促進(ローン減免制度の利用促進、二重ローン解消の努力等)がありますが、日弁連もさらにこれらを強化するだけでなく、他の分野にも活動を広げ、関連機関と協力して災害問題に取り組むべきです。
10 .新たな司法改革へ取り組む―法曹養成制度の改革
2001年の司法改革審議会意見書をもとにした法曹養成制度は岐路にあると思います。法曹志望者を増やし、法曹が未来の職業であることを示していく必要があります。予備試験、ロースクールの再配置、研修所のあり方等検討していくべき問題は多岐にわたります。是非、司法改革審議会を再度立ち上げて、法曹三者だけではなく、研究者・市民・政界・経済界などを含めた大きな議論を開始する必要があります。
また、その過程では、これからの法曹志願者に重い負担を掛けないように慎重に取り組む必要があります。